2000年9月,台風14号の襲来と秋雨前線の活発化により,愛知県,三重県,岐阜県などを中心として日本各地で発生した豪雨は,東海地方に甚大な被害をもたらした.また,2004年には新潟・福島豪雨,福井豪雨,台風23号により,新潟県三条市,福井県福井市,岐阜県豊岡市などでは大水害(洪水災害)が発生した.このような例を始めとして,近年,大水害が頻発しており,それによりもたらされる被害は年々増加の傾向にある.しかも,全世界的な地球温暖化の傾向により,今後もこの種の災害は巨大化し,増加していくことが懸念されている. これらの水害を防ぐために日本で行われてきた対策は,河川堤防の増強,ダム・放水路等の整備と内水排除施設の充実等のハード的な方法が主であったが,近年,ハード対策のみの限界が指摘され,土地利用規制,ハザードマップ作成・周知,あるいは警報発令・避難勧告・指示などのソフト対策の充実も図られてきている.また,従来の行政主導型から,住民,コミュニティ,行政が一体となった防災対策の必要性も指摘されるようになってきた. このような背景,視点を鑑み,独立行政法人防災科学技術研究所では災害に対して安全な社会システム造りを目指したプロジェクト「災害に強い社会システムに関する実証的研究」を2001年度から2005年度までの5年間をかけて行ってきた.本プロジェクトでは,新しい災害対策として「統合的水害リスクマネジメント」,ならびに「参加型の水害リスクコミュニケーション」について,リスク論的視点,社会科学的視点,長期的な視点,政策的な視点から研究し,その具体的な方法を提案することを目標に推進してきた.また,地理学,土木工学,地盤工学などを専門とする自然科学者と,社会・教育心理学,経済学,リスク論,ボランティア論などを専門とする社会科学者が一体となって研究を進めてきた. 本資料集は,上記視点からの研究を推進するにあたって重要となる住民の防災意識と防災行動等の実態に焦点を当てて行ってきた全6回のアンケート調査の概要を取りまとめたものである.
2006年3月
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